カラーとモノクロとPLと


カラーとモノクロとPLと

 

機材・用品 ニコン D610
ニコン AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
現場で被写体と向き合った時、
そこで何を感じ、その感じたものをどう撮り得たいかで
シャッターする前の前提の作業や行為って随分変わるものです。
まして、そこで一つの表現だけでなく2つの方向性を撮影で表したい場合、
サブカットや類似フォト、派生ショットではなく、
同カットで2つのコンセプトを抑えたい事だってある。

それがカラーとモノクロと両方の時だってありますね。
でも、
それは同一の適正露出で撮ったRAWファイルであれば
どうにでもなるとか、何とかなるって話でも無いんですよね。


とある日、何気ない沿道の
森林の木漏れ日の素敵さと羊歯葉の緑に惹かれ立ち止まりました。
印象はストレートなもので、
光と影、そして自然の緑の色彩でした。
ただ、そこで
表現したいもの、再現したいものというのは何かと考えた時に
僕は2つの葛藤がありました。
そこで、カメラを構える前からカラー前提とモノクロ前提の
2つの方向性を抑えたいと思ったのです。
そして、それはRAWのワンショットから
カラーとモノクロの2つのコンセプトを仕上げる事は不可能と瞬時に思いました。
光と影の印象をモノクロで出すには輝きと照りが必要、
羊歯の葉の緑と色のコクを出すには光の照りにより輝度が上がり反射は邪魔になる。
そう相反するもので、一枚の無難な1枚のRAWでは再現不可能です。

PLを効かせたものと効果をゼロにしたもので
カラー前提とモノクロ前提とで撮り分ける事としました。

現場で感じ描いた前提を念頭に仕上げた
カラーとモノクロの各原盤と仕上げを追い込んだ結果としたものを
各比較してご覧いただければと思います。




PLフィルターを適宜に効かせ、
カラーで色彩とトーンの美しさ前提に撮った原盤がこちら。

アップロード画像

 

カメラ:
ニコン D610
 
焦点距離:
92.0 mm
 
フラッシュ:
Off
 
撮影モード:
Aperture-priority AE
 
シャッタースピード:
1/100秒
 
絞り数値:
F5.6
 
露光補正量:
-1.3EV
 
ISO感度:
180
 
ホワイトバランス:
As Shot




最終仕上げはこうなりました。↓



アップロード画像

 

カメラ:
ニコン D610
 
焦点距離:
92.0 mm
 
フラッシュ:
Off
 
撮影モード:
Aperture-priority AE
 
シャッタースピード:
1/100秒
 
絞り数値:
F5.6
 
露光補正量:
-1.3EV
 
ISO感度:
180
 
ホワイトバランス:
Custom


PL効果無しの下↓のような原盤からここまで追い込むのは不可能です。
出来ることは出来るけれど、
それには露出とコントラストと彩度調整だけでは無理で、
輝度と彩度の個別コントロールまで追い込む手間がかかります。
原盤でこうしてPLフィルターを適宜にかけて撮れば、
ちょっとした仕上げの追い込みで完結がもう見えてきますね。



調整に伴ってコントラストや明瞭度まで影響が出るものでもありますし
緑のコクを出すために露出を下げると
同じ色でも色帯により輝度と彩度のピークまでが変わるので
自然風景のこうした状況はとても奥が深いですね。





逆に、
モノクロで光と影の印象をメッセージの主題とする場合は
艶や照りがとても大きな要素な訳で、
PLによる光の反射を抑える事がデメリットになる事も多くなりますね。
ある意味で風景写真家がPL無しではあり得ないというダメカット位な方が
ハイライトの伸びや光のトーンがモノクロで活きて来るはずです↓


アップロード画像

 

カメラ:
ニコン D610
 
焦点距離:
92.0 mm
 
フラッシュ:
Off
 
撮影モード:
Aperture-priority AE
 
シャッタースピード:
1/100秒
 
絞り数値:
F5.6
 
露光補正量:
-1.3EV
 
ISO感度:
100
 
ホワイトバランス:
As Shot





モノクロ前提なら、
PL効果無しで撮った原盤は反射や照りをたくさん拾ったものが適します。
これは
のちにグリーンフィルターをシュミレートしたモノクロで仕上げる前提撮影です。
これはカラーで上のような最終仕上げまで追い込むのが不可能なのが
原盤を見るとお分かり頂けると思います。


逆に、モノクロに追い込むには
こう意図的に撮ったものの方が適すのもお分かり頂けるのではないでしょうか。
上のカラー原盤からモノクロ化すると、もっとフラットでトーンのくすんだもので、
光の弾け感の弱い、どんより重めな仕上がり想像が付くのではないでしょうか。




モノクロで最終的にハイコントラストで
光と影の印象をメインの念頭に仕上げたものがこちら。↓



アップロード画像

 

カメラ:
ニコン D610
 
レンズ:
ニコン AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
 
焦点距離:
92.0 mm
 
フラッシュ:
Off Did not fire
 
撮影モード:
Aperture-priority AE
 
シャッタースピード:
1/100秒
絞り数値:
F5.6
 
露光補正量:
-1.3EV
 
ISO感度:
100
 
ホワイトバランス:
Auto


RAWでモノクロの疑似フィルター処理をすると
これがまた表現の振り幅のピークが良い方に増しますね。





デジタルになっても
レンズの前に処方するアナログな行為はとても大事であったり
現場で目の前にある対象に対し
何をどう感じたかを現場で出来る事は出来るだけ徹して励行した方が
後の再現の幅と引き出しの振り幅の代に大きな差が出る事は
フォトライフ道では普遍の肝であるという事なのかもしれませんね。


カラーも捨てがたいねとか、モノクロも捨てがたいねって
そういう話ではなく、
2つの観点を有効に伸ばす事が大事なのでは無いでしょうか。
a
同じワンシーンでメッセージが2つあっても良い時もある気がします。
一つの強固なメッセージとコンセプトで詰めるのが良い時もあります。


どれがベストでどれがベターかは、その日その時でも変わるし、
どれが好みで、どれが良くてどれが悪いかも基準は様々だし
決め付けなくて良い事だけど
フォトライフの幅と、表現の引き出しのピークは
自分の決め付けで狭めないで、無限の可能性の幅を持ち続けたいものですね。



cozy

投稿日:2015/02/04